【投稿】K
「原発とめろ!新橋アクション」第5弾学習会で感じたこと
「福島原発事故に対する私たち大人の責任は、東電(国)に責任をとらせること」 「東電の責任を問う」と題して、週刊金曜日・編集部成澤宗男さんを迎えて学習会を開催された。
成澤さんは、まず、「事故をおこした当事者の責任として、通常は、現状回復が課せられる。しかし、最低でも250兆円が必要とされる事故の原状回復など、政府も東電も出来きない。だが、責任をとらなくて良いという訳ではない。原発は、責任が取れない事故になるのだから、原発から手を引くことが大前提。しかし、東電は、『事故をおこした責任者』という自覚が薄く、事故原因も『人災』だと認めていない」と現状を明らかし、東電と国の「責任免除システム」について鋭い批判を展開された。
@第三者委員会と言われて設置された「東電に関する経営・財務委員会」では、
・「破綻処理して全資産を賠償に当てる」ことを拒否。コストの見積りを低くし銀行から追い貸しが出来るよう債務超過を改ざん。
・この委員会は、経済産業省出身の西山圭太、下田辺(東電会長)、葛西紀之(JR東海会長)が事務局をつとめる政府の御用委員会。
A原子力損害賠償機構法について
・可能な限り資産から賠償金を支払わせず、東電に「贈与・交付」という形で資金を出し、東電が返却するという仕組みを作った。電気料金値上げ=国民負担と再稼働で返却。(加害者が被害者から金をとる!)東電の無限の責任を実質免除。
・この機構の人事は、@と同じ下河辺、葛西らが横滑りしている。
B「新生」東電(下河辺会長)の経営方針
・電気料金値上げ10・28%、2013年4月柏崎刈羽稼働を決定。
・しかし、2012 年の経営計画は、早くも資金不足なり破綻。除染や賠償のために(廃炉の費用は除く)10兆円必要だと国に要求。
東電と銀行を守ることのみが貫かれている。そして、「金を要求する人=@」と「これだけ出せますという人=A」、「金を受け取るという人=B」が同一人物=下田辺。実に腐敗し独裁的な構造が作り出されている。
しかし、あまりの巨額の費用の必要性(250兆円)の現実の前にこのカラクリ事態が破綻し始めた、と分析された。
そして成澤さんは、「今が、東電を攻めるチャンスだ。大騒ぎしよう」と励ましてくださった。
東電と国が行っているデタラメを多くの人に広め、当たり前の企業責任の追求をしていくことが、福島の人々と私達の人間としての尊厳の回復であり、生きていく力になると確信を深めました。
12月10日、東電の責任追及と柏崎刈羽原発再稼働撤回の申し入れ行動を真剣に闘いたいと思います。
【資料・成澤さんレジュメ】
東京電力の責任を問う
週刊金曜日 成澤宗男
Tはじめに
事故を起こした当事者の責任として、通常は原状回復が課せられる。だが原発事故がいったん起これば、一企業どころか政府も誰も原状回復などできない(最低でも250兆円必要)。放射能で汚染された広大な山林をどうやって除染するのか。日々放射能が流れ込む周辺海洋を、どうやって浄化するのか。原発事故は、責任など取りようもない桁外れの甚大な被害を、予見しがたいほどの長期間にわたって及ぼす。レベル7の原発事故なら、まともに賠償と復旧事業費に取り組んだら国家の財政破綻も招きかねないような危機的事態になる。結局、重大事故が起きれば業者も政府も責任を取りようがないのが原発であるならば、最初から原発に手を出すべきではなかった。
したがって原発事故の最低限の政府と業者の「責任の取り方」(責任が取れないからといって、何もしなくていいのではない)とは、まず何よりも自分で責任を取りようがなくなる事業にはもう手を出さない(原発と永遠に縁を切る)と誓ってもらうことから出発するしかない。しかし、これすらやろうとしないのだから、「3・11」で何を経験したというのか。そもそも東電は、「事故を起こした責任者」という意識が乏しい。彼らにとって事故原因は「予測不可能な天災」であって、未だ公式には人災とは認めていないからだ。
U常識的企業の「責任の取り方」と、実際東電がやっていること
@ まず自社に責任があることを認める→「社内事故調査の最終報告書」(2011/6/20)で、原因は「想定外の津波」と断定。経営陣の責任は一切認めず。
A 責任者が責任を取る→2011年6月の株主総会で、清水社長は退任したが、最高責任者の勝俣は留任し、その後に日本原子力発電に天下り。取締役と監査役16人中、8人がグループ企業のトップに。これまで、引責辞任も司直の一切の事情聴取も無し。
B 出来る限り被害者に弁償する→変電設備約8400億円、配電設備約2兆2000億円、送電設備約2兆1000億円、計5兆1400億円を温存。地域独占継続。
C 現状回復→廃炉の費用は、第1〜第4号機のみで、たった1兆3243億円。5号機、6号機、そして第2原発は再稼動させるつもりだ。巨大規模で進行する水質汚染は対策ゼロ。
D 二度と事故を起こさないための対処→経営再建の柱が再稼動。これほどの大事故を起こし、「安全神話」も崩壊して未だ原因も不明ながらまだ再稼動に固執。
E 銀行は「貸し手責任「をとり、債権を放棄する→2012年春に総額約1兆円を追加融資。その条件が、何と原発再稼働と電気料金値上げ!銀行と一体の財務省は、債権放棄で銀行に損をさせたくない。
↓
弁償という社会的責任を果たすのであれば、東電を破たん整理して@最高の資産である発電と送電に所有権を分離し、資産売却で費用を捻出A銀行の債権放棄―しかない(プラス原子力予算の組み替えも必要)。だが、責任者の東電も政府も、地域独占を死守するために絶対にやらない。
U 責任追及としての裁判
A 株主代表訴訟(2012/3/5、45人)
@20年前から、株主総会で脱原発・東電株主運動が地震対策、津波対策などを提案、また老朽化している福島第一原発の早期廃炉を提案してきたにも拘らず、取締役会として 反対を続けてきた。
A2002年7月に発表された文部科学省の地震調査研究推進本部の地震調査委員会の見解、2006年9月に改定された原子力安全委員会の「新耐震指針(発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針)」など数々の警告があったにも拘らず、対策を講じなかった。
B福島原発事故を起こしても、経済性を優先するあまり、海水の注入が遅れたり、
ベントが遅れたことで膨大な放射性物質を大気中のみならず、海洋にまで放出させ多くの人々、そして生物、植物を被曝させた。外部電源を確保するための電線も、耐震設計がなされず。東電歴代の取締役27人は、全資産を売却して5兆5000億円を会社に返却せよ。
B 第一次東電告訴(2012/6/11、1324人。8月に受理)
@1997年に地震学者の石橋克彦・神戸大教授(当時)が論文で、大地震と原発事故が同時に発生する破局的災害の危険を指摘していた。しかし、国の原子力安全委員会は2006年に原発の耐震設計審査指針を改訂した際、担当委員の1人だった石橋氏の警告を無視して、地震による原発への影響を過小評価し、具体的な津波防護策も盛り込まなかった。
A2008年に東京電力は、福島第一原発で想定される津波の高さが15メートルを超えるとの試算を出していた。しかし、対応する防潮堤の設置に数百億円の費用と4年の期間がかかるため、同社幹部は建屋や重要機器への浸水を防ぐ対策を取らなかった。2010年に原子力安全委員会が、津波を安全対策上の考慮に入れるよう定めた「手引き」を作ったが、東電はそれでも対策を怠り、原発事故を未然に防ぐことを妨げた。
B福島第一原発の事故が発生した後、国や原子力安全委員会は、SPEEDIなどで放射性物質による汚染が広範囲に及んでいることを早期に察知していながら、とくに子どもたちへの防御策を積極的に取らずに放置した。学者らも、県内の汚染実態を把握していないにもかかわらず、「大丈夫」「安全」との見解を流し続けた。
C第二次東電告訴(2012/11/15約1万3262人)
@ 東電の勝俣恒久前会長ら役員、原子力安全委員会、県の放射線健康リスク管理で助言してきた福島医大の山下俊一副学長ら33人の刑事責任を告発。
A 東電や国は津波対策を怠り、今回の事故を発生させ、事故後の避難対策や情報開示も不十分で、多数の住民を被ばくさせた。
V 官僚・野田一派・国家権力ぐるみの「東電責任免除」システムのからくり
最大の問題は、東電のモラル欠如ではない。官僚・野田一派が、以下のような国家権力ぐるみで東電に本質的な責任を取らせない巨大なカラクリを作ってしまった構造的腐敗にある。銀行(財務省)の利益を守り、東電からおいしい思いをするためだけに。
@「東京電力に関する経営・財務委員会」の報告(2011/9/30)
下河辺和彦(委員長) 弁護士
引頭麻実 株式会社大和総研執行役員
葛西敬之 東海旅客鉄道株式会社代表取締役会長
松村敏弘 東京大学社会科学研究所教授
吉川廣和 DOWAホールディングス株式会社代表取締役会長
● コスト見積もりは、賠償4兆5402億円、除染ゼロ、廃炉1兆3243億円(福島第1の1〜4号機だけ)。まともに計算したら債務超過になるので、コストを過小評価し、銀行の追い貸しができるよう資産超過に改ざん。本来あるべき、「破綻処理して全資産を賠償に当てる」という方法を拒否。
● 「第三者委員会」と報じられたが、「政府の御用委員会」。事務局を経済産業省が牛耳り、事務局長は産業構造課長などを歴任し、経産省の敏腕官僚として知られた西山圭太。
A原子力損害賠償支援機構法
● 可能な限り資産から賠償金を支払わせず、つまり破綻処理せず、東電に「贈与」「交付」という形で資金を出し、東電が返却。結局、電気料金値上げ=国民負担と再稼働で返却。事故を起こした東電の無限責任を実質免除。
● 原子力損害賠償支援機構(原子力事業者が損害を賠償するために必要な資金の交付その他の業務を行うことにより、原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施を確保)の人事は、「東京電力に関する経営・財務委員会」の横滑り。
下河辺(委員長) 弁護士
引頭麻実 株式会社大和総研執行役員
葛西敬之 東海旅客鉄道株式会社代表取締役会長
川端和治 弁護士
田中知 東京大学大学院工学系研究科教授
前田匡史 内閣官房参与
松村敏弘 東京大学社会科学研究所教授
吉川廣和 DOWAホールディングス株式会社相談役
B「新生」東京電力(下河辺和彦会長)
A「総合特別事業計画」(2012/5/9経済産業省認可)
● 電気料金10・28%値上げ。柏崎刈羽原発の2013年4月再稼働。
● 政府の移住制限区域が年20ミリシーベルトからであることを利用し、それ以下は住民全員が「帰宅する」ことを前提として賠償費用を計算。4344「億円削減。除染費用も計上せず。
B「再生への経営方針(2013〜2014)」(2012/11/7)
●「 被害者への賠償と高線量地域の除染費用を合計すると、原子力損害賠償支援機構法の仕組みによる交付国債の発行額5兆円を突破する可能性がある。さらに、低線量地域も含めた除染、中間貯蔵費用などについて、同程度の規模の費用が、今後、追加で必要となるとの見方もある」
● 「 廃止(注=廃炉)措置関連費用は……追加となる研究開発については国の主導を仰いでいるが、今後、燃料デブリの取出し、最終処分まで含めた全費用はこれまでの引当額よりもさらに巨額にのぼる可能性がある」
● 「被災地の復興を円滑に進めていくために今後必要と見込まれる費用は、一企業のみの努力では到底対応しきれない規模となる可能性が高い」
↓
「カネをこれだけちょうだい」と要求する側と、「カネをこれだけ出します」と決定する側と、「カネを頂いてこれだけやりました」という側が、何と同一人物!
その挙句、今その人物が言っていることは、賠償と除染だけで10兆円になるとして「やっぱりダメでした。カネが足りないから政府が何とかして」!これほど前代未聞のデタラメをやらかした野田一派と黒子の経済産業省の官僚を誰も批判しない社会は、正気ではない。
W 結論
問題は、東電だけではない。命よりも、カネと権力が優先されるこの国の恥ずべき行動様式は行政・企業全体を見ると何の反省もないまま変わっていない。政府と銀行、東電はグルになり、絶対に本来の責任の取り方=破綻処理をさせない。このままだと、また次の「3・11」が繰り返されよう。
「3・11」とは、戦後飽きもせずに自民党という汚職常習犯で土建屋をはじめとする業者団体の政治ブローカー集団、そして世界有数の地震多発国に原発を電機業界とゼネコンの政治資金(賄賂)と引き換えに50数基も建設した利権屋を与党にし続けた、有権者の恐るべき無知と無責任が積み重なってもたらしたのだ。
だが、現在最も悲劇的であるのは、「3・11」が起きたことそれ自体にあるのではない。責任を取れないような事態が起きるのだということを学んだはずなのに、人々は野田の「収束宣言」にさほどの疑問は持たず、官僚と企業は再稼動による原発利権の維持に狂奔し、福島県の行政は人口流出による税収減=地方公務員の収入減を避けたいがためだけで、放射能にまみれながら「回復」と「復興」しか言わない。「3・11」から何も学んでないし、現状を直視せず、真の対策も講ぜずに小手先だけで逃げようとしている。典型は今も国会承認ができていない「原子力規制委員会」で、あれほど批判された業者・御用学者・役人が馴れ合う原子力ムラがごっそり温存された。